661人が本棚に入れています
本棚に追加
桜が綺麗に咲く、四月の初め。
慣れないスーツを着て、私立霧山学園の講堂にボーッと立っている俺の名前は、
仁科有栖。
女みたいな名前だと、よくからかわれたものだ。
先程からちらちらと感じる視線が鬱陶しい。
面倒な式の中で居眠りすらできやしない。ため息をついて、首を回した。
「以上で俺様からの祝辞は終了だ。」
あー、欠伸して今晩の飯のことを考えていたら俺様気取りの生徒会長とやらの演説を聞き逃してしまった。
別に聞きたかったわけではないが。
あー、煙草が吸いたい。
ラーメンも食いたい。
餃子もいいな…
「…い」
メンマ抜きのラーメンはラーメンじゃないし…家で作るかな。
「…せい」
それにしても、ニコチン切れてきたせいか…イライラすんな。
「仁科先生!!!!!!!!!!」
「え?あ?はい」
スピーカー越しに名前を呼ばれて、反射的に顔を上げた。
「…あ」
講堂じゅうの視線が俺に向いていた。
あーあ、やっちまった。
最初のコメントを投稿しよう!