プロローグ

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薄暗くなった取調室の中で、白熱灯の電気スタンドだけが煌々と光っている。 その光の中を、取調室の中を舞う夥しいホコリが横切る。 灰皿にいっぱいの吸殻から一筋だけ弱々しい煙が上り、 頭を悩ます二人の刑事と、うつむく一人の男。 昼下がりからしとしと降り出した雨の音と、カエルの五月蝿い鳴き声だけが 取調室の中に響き渡っている。 桑波春臣 32歳 地方の家電メーカーに勤める営業マン。 7年前に結婚した妻との間には、小学生になったばかりの息子がいる。 市街から車で約30分のマンションに住んでいる。 勤務態度も、いたって真面目。昇進の話も舞い込んでおり、 順風満帆な一般市民。 昨日までは。
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