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「夏夜さん?」
「あ、ううん。あたり。」
ほんの一瞬だけ飛んでた。
記憶の奥底にある何かを刺激された気がしたから。
でも何かはわからない。
「でしょ。」
「うん。」
あたしは曖昧にしか笑えなかった。
なぜかはわからないけれど、泣きたくなった。
まあ、だからといって泣けるわけではないけれど。
でも鼻の奥が少しツンとしたのは、潮風が鼻を抜けたからということにしておこう。
「っくしゅ。」
「あ。」
聞こえた方を見れば腕を摩る姿が目に入る。
昼間の工場内はまだまだ暑いが、この時間帯の外はそれなりに冷え始めてきている。
ましてここは海だ。
「ん?あ、ごめん。気にしないで。」
「ううん。寒いよね。ごめん。お店、行こうよ。」
気にしないわけにはいかないし、忘れかけていたけれど、今夜笹沼さんと一緒にいる本来の理由は海へ来るためではなくデザートを食べに行くためだ。
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