日常

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「海、もういいの?せっかく来たのに。」 「うん。ありがとう。」 今度はちゃんと、笑えたかな。 車が走り出してすぐ、笹沼さんが口を開いた。 「嫌だったら無理しなくていいんだよ?」 「何が?」 主語が見当たらなかった。 こうして一緒にいることだろうか? 「今日行こうとしてる店、なんかあったんじゃないの?あ、いや、別に何もないならそれでいいんだよ。話したくない話だったら話さなくていいし。」 少しだけど、こう焦っている笹沼さんはなかなか見ない。 ちょっとレアだ。 「何にも無理してないよ。ただ、今度行こうって言ったままだったな、って思い出しただけ。」 何でもないように言ったつもりだが、動揺は伝わってしまっただろうか? おかしいな。 彼を捨てたのは、他でもないあたし自身なのに。 これじゃ未練たらたらみたいじゃない。
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