日常

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夢のせいだ。 彼の。橋本大介と付き合っていた頃の夢を見たからだ。 元彼、橋本大介は5つ年上で、あたしや笹沼さんが入社したときには既にいた社員。 配属先の先輩だった。 彼の転勤で1年しか一緒に働けなかったが、入社して4ヶ月で付き合い始めていたあたしたちは、まぁ当たり前だがそれからも会っていた。 転勤といっても隣県にあるグループ会社の別工場へ移動しただけで、仕事内容も変わることはなかったらしい。 この会社ではよくあることなのだそうだ。 彼とは自分を偽ることなくいられた。 喧嘩はあっても彼があたしを否定することはなく、居心地がよかった。 夢はそんな頃のあたしたち。 彼の家のソファに並んで座り、頭を預けて眠るあたしを彼が優しく撫でている。 それを客観的に背後から見ていた。 勿論当事者なのだから実際にその光景を見たことはなかったが、それはよくあった出来事。 彼の手が心地好かった。 あの空気が好きだった。 幸せそのものだった。
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