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「もしよろしければ少し付き合ってくれませんか?」
そう言って少し恥ずかしそうにはにかんだ笹沼さんが鞄から取り出したのは、ファミレスのデザート割引チケット。
「はい。」
それを見て思わず頬が緩んでしまった。
今の時代、男性が甘いものを好むのはそう珍しいことではない。
しかし彼は、男性が一人で、あるいは複数でも男性のみで甘いものを食べに行くというのが恥ずかしいと言う。
だからこれまでも何度か、仕事の帰りにこうして誘われるまま食べに行くことがあった。
「いや、かたじけない。今日までなんですよ。」
恥ずかしそうに頭を掻く笹沼さんは嬉しそう。
普段も堅い人というわけではないが、こういう姿を見るとなんだかかわいく思えて微笑ましくなる。
「夏夜さん車ですよね?」
「はい。」
「じゃあ一度夏夜さんのアパートに寄りましょうか。
夏夜さんのは置いて、俺の1台で行きましょ?」
「えっと…。」
今回笹沼さんが見せた割引チケットは会社を挟んであたしのアパートと反対側のお店だ。
つまり笹沼さんのアパート側。
いつもはあたしのアパート側だからお言葉に甘えさせてもらっていたが、これでは行ったり来たりと大変だ。
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