5人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、夏夜さんはここ、行ったことある?」
「いえ、ないです。」
隣の道を車で走ることは何度もあるが、入ったことはない。
そういえば、前の彼と今度行こうなんて話していたな。
結局行くことはなかったけれど。
「夏夜さん、疲れてる?」
「え、あ、平気ですよ。今日は結構ゆるかったんで。」
ふと思い出して沈んでしまった気持ちを慌てて振り払う。
せっかく笹沼さんが誘ってくれたのに暗い顔をしては失礼だ。
「んー…もう会社出てるよ?」
「?そうですね。」
いまいち話が見えない。
あたしのマンションを出たところなんだから会社を出たことくらいわかっている。
「いつまで敬語?」
「あ…。」
こうして一緒に食事に行くようになってからは、普段は敬語でも、会社を出たら敬語をやめるよう言われていた。
「ごめん。」
1年近く経つけれど、あたしはまだ慣れていないらしい。
こうして度々指摘される。
二人でいることにはだいぶ慣れたと思うのにな。
最初のコメントを投稿しよう!