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「やっぱり予定変更。」
「え?」
言うや否や、ウインカーを上げて大きな道に出る。
大きく東西南北で分ければ方角は変わっていないけれど、この道沿いには行く予定のファミレスはない。
「ど、どこ行くの?」
割引チケットの期限は今日まで。
時刻は21時を過ぎたところ。
行かないの?
笹沼さんの表情は、よくわからない。
「内緒です。大丈夫、変なところじゃないから。」
ははっと軽く笑ったその声に、楽しさは感じられなかった。
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「はい、到着。」
「…海。」
着いたのは海だった。
車を降りて階段の上から辺りを見渡す。
夏を過ぎたその場所に、時間帯も手伝ってか人気はない。
波も穏やかで、晴れた夜空を写していた。
あたしの好きな空間。
笹沼さんに話したことは、あっただろうか?
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