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上機嫌に吹子が歩いていく。スキップすら踏みそうである。
僕は、宇佐美と吹子の関係をウサギとカメの御伽噺のように見えた。せっかちなウサギとのんびりなカメ、もちろん、本人達に言ったら怒るだろうから言わないけれど、仲良しの友達のような、宇佐美のような存在は貴重なんだ。佐志吹子には彼女ような真っ直ぐに向き合ってくれる存在が必要なんだって僕は勝手に思う。
「ご機嫌なようで」
「ニャハハハ、朝から目覚めがよくてね、こんな朝は不吉なことが起きそうだね」
吹子が猫のように笑う。不幸を呼び込む黒猫のように笑う。
「こういう時は幸福だろ?」
「私に幸福なんて似合わないよ」
そんな『当たり前』な日常がそこにはあった、笑いあえる日常があった。
僕達の通う、高校で忌まわしい事件が起こっているなんて、もちろん、僕達は知らない。
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