当たり前な日常である。

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佐志吹子は、当たり前が嫌いだ、その偏った、価値観や主義、主張はわかりやすい例として服装に現れる。 吹子曰わく、「女の子が女子生徒の制服を着るのは当たり前、けど、私は当たり前という言葉が嫌いだから、男子生徒の制服を着ている」らしい。 間違いのないように言っておくけど、吹子は女の子だ、ただ、短く切りそろえられた髪やあどけなさの残る顔立ちは遠目から見ると男に間違われやすい、間近なら、よくぞそこまで育ったと拍手したくなるような胸の大きさで女の子だとわかる。 「なんか、圭一の視線がいやらしい」 「なんのことかな? あらぬ誤解をやめなさい」 事実、学ランを羽織っても隠しきれていない。そもそも、彼女はそれを隠すつもりもない、そんなことを学校側が認めるわけもないけれど、ひと悶着の末、高校生二年生の現在では放置状態だ。 噂では吹子が校長をたぶらかしたと囁かれているけれど、現状は校長、教頭、数人の教師の弱みを握り、ゆすって、脅して無理矢理、認めさせたのだ。そのことを知る人は僕を含め、数名のみである。 ただし、未だに吹子を更生させようと奮闘する風紀委員がいるけれど、今は無関係なので割愛。 それはいいとしても、一言、吹子に言わないといけないことを思い出した 「あのさ、吹子、君が当たり前が嫌いなのは知ってるし、その服装もとやかく言うつもりはないよ」 「うん、それで?」 「その服装のせいで、あらぬ誤解を招いてるだけど?」 主に、彼氏いるの? 受け 攻めという頭の痛くなるような、腐ったお花畑をお持ちの女の子達にである。 「いいじゃん、そういう当たり前じゃない感じ、圭一が辱めてられてることもオッケーだよね、むしろ、もっとやれって言いたいよ」 佐志吹子は、当たり前が嫌いだ、だからこそ、当たり前じゃない、ズレた状況を好む。 僕はまた、ため息を漏らす、わかっていたけれど、予想通りの答えが返ってきた。 「もしかして、通学路でむやみやたらに抱きついてくるのもそれが狙い?」 腕を組もうしたりとか。後ろからこっそりドーンと抱きついてきたり、正直、心臓に悪い。 「え? あぁ、そう、圭一、反応が面白いから、てかさ、早く支度してよして、遅刻する」 「あー、わかってるよ」 妙に歯切れの悪い吹子の返事に僕は戸惑いつつも、身支度を整えるのだった。
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