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「ねね、新発売のシャンプー試したっ!?超いい香りするのーッ!」
「あのさ、匂いは付属品。それより洗い上がりはどうなのよ」
「艶ッ!サラッ!触って触ってコレ!」
ああ、その髪俺も触りてぇな。
つーか、1回試したくらいで髪質変わるわけねぇのに。
はしゃいじゃって、かわい。
水曜1限が空きコマで、毎週その時間を駅前のカフェで過ごしていた。
斜め向こうのテーブルではしゃぐ3人組も似たようなモノなのか、いつもかち合う。
うるさいな、と思っていたのは最初だけ。
気付いたら会話に聞き耳を立てるようになっていた。
「えッ!バスじゃないの?レンタカー?私運転パスーッ!」
「こらぁ。あんたはいつもそうやって人任せにするッ!」
キャハハ、とテンションの高い笑い声が上がり、店内に響き渡った。
いつの間にシャンプーの話終わったんだ?
先週から話題になっていた旅行の計画は、1週間で大分煮詰まってきた様子だった。
何?運転?
俺、運転手するけど。
……とか話しかけてみたりして、キモ。
全員同期だとは分かっているが、顔見知りは1人だけ。
多勢に無勢も手伝ってか、こっちから話しかける勇気など湧くはずもなく。
いつも1人でアイスコーヒーをちびちび飲みながら、こっそり観察していた。
ひと際声が高くて大きい、3人の中でいつも一番はしゃいでいるあの娘を。
コーヒーが売りのそのカフェで、その娘だけが、いつもミルクティーを飲んでいた。
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