KOI-GOKORO

3/8
前へ
/10ページ
次へ
「ねね、新発売のシャンプー試したっ!?超いい香りするのーッ!」 「あのさ、匂いは付属品。それより洗い上がりはどうなのよ」 「艶ッ!サラッ!触って触ってコレ!」 ああ、その髪俺も触りてぇな。 つーか、1回試したくらいで髪質変わるわけねぇのに。 はしゃいじゃって、かわい。 水曜1限が空きコマで、毎週その時間を駅前のカフェで過ごしていた。 斜め向こうのテーブルではしゃぐ3人組も似たようなモノなのか、いつもかち合う。 うるさいな、と思っていたのは最初だけ。 気付いたら会話に聞き耳を立てるようになっていた。 「えッ!バスじゃないの?レンタカー?私運転パスーッ!」 「こらぁ。あんたはいつもそうやって人任せにするッ!」 キャハハ、とテンションの高い笑い声が上がり、店内に響き渡った。 いつの間にシャンプーの話終わったんだ? 先週から話題になっていた旅行の計画は、1週間で大分煮詰まってきた様子だった。 何?運転? 俺、運転手するけど。 ……とか話しかけてみたりして、キモ。 全員同期だとは分かっているが、顔見知りは1人だけ。 多勢に無勢も手伝ってか、こっちから話しかける勇気など湧くはずもなく。 いつも1人でアイスコーヒーをちびちび飲みながら、こっそり観察していた。 ひと際声が高くて大きい、3人の中でいつも一番はしゃいでいるあの娘を。 コーヒーが売りのそのカフェで、その娘だけが、いつもミルクティーを飲んでいた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加