行方

5/5
前へ
/12ページ
次へ
ただ、その次の言葉はあたしとはまったく違っていた。 「面白そう!」 「は?伊織?」 「確かにこれなら三人で何とか出来るな!」 「は?兄貴?」 何を言ってるんだ? 「よーし、美奈子!荷物まとめろ!伊織もだ!」 「は?ちょっと待てって!」 「姉ちゃん往生際が悪いよ?」 そんな覚え立ての言葉を言って、伊織はさっさと自分の部屋に向かってしまった。 「ほら、美奈子も!」 「待てよ!住所通りだと引っ越さなきゃダメじゃん!」 あたしだけ頭がついていかない。 「これ、最後まで読めよ…。」 あたしは言われた通り見た。 「そうそう、学校にはもう言ってあるからね。転入先も決めてるから~。皆頑張ってね!」 「ふざけんなよ…。」 思わず涙が出そうになった。 そんなあたしの頭を兄貴は優しく撫でてくれた。 突きつけられた現実が、あたしにはつらかった。 あんな動物園、どうでもいいはずなのに…。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加