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その日の夜。
ふと僕はダンジョンで犠牲となった彼女の事を思い出していた。
吹っ切れたと思っていたが、やっぱりあの別れ方は吹っ切れないか。
彼女の名前は朱鷺所沙耶。
最初はスパイとして送り込まれた彼女に殺されかけたけど、彼女があんな事になる前に男としてケジメをつけておきたかった。
でもそれは叶わなかった。
あのダンジョンが終ったら告白するつもりだったが彼女は僕の前から存在ごと消えてしまったからだ。
今でも彼女の事を想うと胸が痛いし苦しい。
例のダンジョンで犠牲となった彼女を僕は受け入れたくなくて、来る日も来る日もあのダンジョンの入り口までいった。
だが、彼女はやはり現れなかった。
彼女との思い出は数える程しかなかったが、一緒に行ったゲームセンターのクレーンゲームの景品のぬいぐるみが僕の勉強机の上においてある。
多分、これは一生の宝物になるだろう。
そう彼女の思い出に浸っていたら急に携帯が鳴り出した。
それは恭介だった。
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