地の刻(1日目)

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「凛…あんた、何で!?」 珍しく猪ノ瀬が取り乱している。 二人は知り合いのようだ。 傍目から見ると親子に見えなくもないが。 あたしは急に緊張感が萎えた。 それは他のみんなも同じだったようで。 「なーんだ。敵は小学生か。余裕じゃん。」 鳥澤楓はケラケラ笑う。 「あ、いや、凛は…」 猪ノ瀬は「マズイ」というように口を押さえた。 「…冬馬ちゃんが言ってたわ。」 急に、小学生の声のトーンが落ちた。 「こちらのチームは個人主義の奴らが多いから、崩しやすいって。 とくに鳥澤楓は単細胞だから敵じゃないッてさ。」 「あん?」 鳥澤は意外な小学生の反撃にブチギレた。 「…鳥澤、やめなさい。その子、同級生よ。一応ね。」 三神静はフウッと息を吐いた。 「高校生?…嘘っ!…あ、ごめん!」 あたしはつい、口に出して言ってしまってから、女の子に謝った。 凄い眼で睨まれてしまった。 きっと、身長がコンプレックスなんだろうな…。 「凛は…根岸凛(ねぎしりん)はクラスメイトだ。」 猪ノ瀬は肩をすくめた。 「ああ、そうです。 お見かけしたことあります。 何せ、生徒数が多いですから、気がつかなくてごめんなさいね。」 委員長が謝ると、凛という子はようやく機嫌を直してくれた。 「あたし、わざわざあんた達に忠告しに来てあげたんだから! …感謝してよね! まあ、冬馬ちゃんにそうしてあげてって頼まれたんだけどさ。」 「冬馬冬馬って、さっきからあんたが言ってんの、もしかして、冬馬瑞季(とうまみずき)の事?」 三神静は機嫌が悪いんだと思った。 理由は分からないけど、凛が現れてから、なんだか普段よりもイライラしてるように見える。 「そうよ。生徒会長の冬馬瑞季様よ。 こっちのリーダーは最強なんだから!! あんたたちは全員死亡確定なんだから!! あはははは!!」 死亡…ゲームに負けるってことか。随分と大袈裟な物言いだ。 まるで本当の小学生みたいな子だな。 子供相手なら、わざと負けてあげてもいいけれど、何かこの子には負けたくない気がする。 「冬馬ちゃん、言ってた。 …おそらく、"三神さん"たちでは、この状況を理解出来るまでに1日では足りないだろうって。 だからあたしがこうして来てあげたってわけ。」
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