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「ふあぁ…よく寝たぁ。」
あたしは12時間の軟禁状態からようやく解放されて、中央ホールで大きく伸びをした。
冬馬には「決して部屋から出ないように」と念を押されていたけれど、実は"寅"の刻の間、何度も好奇心に負けそうになって、外へ出そうになった。
その度に、乾志保(いぬいしほ) の犠牲を考えて、あたしはぐっと我慢した。
彼女の死を無駄には出来ない。
…実際、志保だって、本当に死ぬとは思っていなかっただろう。
いつも彼女はそうだった。
考えるより先に行動。
行動してから後悔する。
死んでしまったら、もう後悔も出来ないんだ。
馬鹿…本当に馬鹿。
いや、本当はその場にいた全員が、このゲームの事を本気にしてなどいなかったんだ。
その甘さが志保を殺してしまった。
「アイリーン、物思いに耽ってないで、早く助けてよぉ!!」
見れば部屋の中央で、根岸凛が椅子に縛りつけられていた。
「あら、凛。なにそれ、新しい遊び!?」
「…んなわけあるか!!地の奴らにやられたんだよッ!」
凛は早く早くとあたしを急かす。
紐は固く結ばれていて、なかなかほどけない。
「何か切るものでもあればいいんだけど…。」
あたしが苦戦していると、いつからそこに居たのか、新藤姉妹が気持ち悪いくらいソックリな顔を寄せあってひそひそ話している。
「…クス。」
「クスクス。」
「お似合いよ、凛。」
「そのまま、次の生け贄におなりなさいな。」
新藤真由(しんどうまゆ)と新藤麻耶(しんどうまや)。
日本人形のような端正な顔立ちの双生児。
外見上の見分けは、本人たち以外はまったくつかないらしい。
そのくせ、今は二人して"辰"の部屋に閉じこもっているから、ますます分からなくなる。
当初、真由は"申"の部屋にいたのだが、ルール上部屋の移動がダメとは書いてないのをいいことに、2人で1部屋を共有しているのだ。
「しっしっ!お前らに頼んでないッ!…アイリーンまだなの?早くぅ!」
「ごめん、ごめん。…はい、取れたわ。」
凛は自由の身になると、すっかり赤くなってしまった皮膚をさすった。
「畜生ッ!!酷い目にあった!!あの蛇女、絶対に許すまじッ!!」
一体どんな目にあわされたのか、凛ったら、悪い口がさらに悪くなっている…。
やや、遅れて。
"午"の部屋のロックが外れる音がして、冬馬瑞季が颯爽と現れた。
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