天の刻(2日目)

3/6
76人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
みんな同じ高校3年生なのだが、彼女に対してだけは、なぜか妙な緊張感が走る。 生徒会長だから? 成績トップだから? 美人だから? もちろん、それもあるけれど、きっとそれだけじゃない。 彼女の存在自体が…何と言うか…畏怖に似た感情を呼び覚ますというか。 「と…冬馬ちゃん、聞いてよ!あいつらったら、酷いの!」 凛は冬馬に駆け寄る。 冬馬はそれをサラッと無視すると、椅子に腰掛け、ポケットからメモ帳とペンを取り出した。 「ちゃんと覚えてきてくれた? あちらの人達のお名前と、部屋の組み合わせ。」 「う、うん…。」 冬馬がまず先にやるべきは凛への謝罪のはずだった。 肩透かしを食らった凛は、それでも健気に記憶した全てを冬馬に打ち明けた。 冬馬はサラサラとメモを取る。 「分かったわ。ありがとう凛。…危険な目にあわせて、ごめんなさいね。」 「え…う、うん。」 冬馬は凛の頭を優しく撫でた。 「あちらのチームに三神静がいる可能性は高かったわ。 それをもっと確信出来ていたら、絶対に貴女を行かせたりはしなかった。」 そう…かな? 冬馬はほぼ確信してたんじゃなかった? 選ばれし"12のケダモノ"の名を。 「カードに関しては何か分かった?」 「そっちは収穫ゼロ。 むしろ、三神にあたしのカードを奪われそうになった。 イノッチがいたから助かったけど。」 ふうん。あちらのチームには凛の友達がいるのか。 「貴女のカードの内容、知られた?」 冬馬の表情が急に険しくなる。凛は頭をブンブン横に振って否定した。 「まさか!あいつらに会いに行く前に、裏面の文字は全部削り取って、トイレに流したわ。 他のメンバーの事も聞かれたけど、実際にカードの内容知らないし。」 「そう。貴女は機転がきくわ。」 「なるほどね。あたしもカードの文字、消しておこうかな。」 凛のアイデアはいいと思う。 万が一、敵チームにカードを奪われてしまっても、内容が分からなければ使うことも出来ないだろう。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!