天の刻(2日目)

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あたしは、あたし達はもう1度冬馬がスイッチを押してくれていなかったら、とっくに正気を失っていたかもしれない… これは後から落ち着きを取り戻した冬馬に聞いた話だが、落ちるとき、椅子の骨が真っ直ぐに伸びる仕掛けになっており、身体が地面と鉄椅子とのサンドイッチ状態になるらしい…。 「1日目の生け贄は乾志保さんになってしまったけれど、ゲーム終了まで、あと5日ある…つまり生け贄はあと5人必要ってこと。 分かるわね?」 あたし達は頷く。 「私は自分のチームの仲間をこれ以上、失いたくない。 皆もそうでしょ?…生け贄は、あちらのチームから出してもらおうと思うの。」 …?冬馬、それおかしくないか? 自分たちさえ生き残ればいいと言うの? それで、本当に勝ったと言えるの? 「愛理の言いたい事は分かる。」 冬馬はギリッと奥歯を噛み締めた。 「私達の本当の敵は、三神たちじゃない。…私達を誘拐し、こんな狂ったゲームに参加させた奴ら。おそらくは…」 冬馬は、ハッと我にかえる。 「と、とにかく私達は生き残らないと…死んでしまったら、元も子もないわ。…そこで相談なんだけど。」 彼女は生徒会長の顔になる。 「戦略を練りやすくするために、皆のカードの能力を教えて欲しいの。もちろん、私のも教える。…どうかしら?」 冬馬は一同の顔をぐるりと見渡した。 最初に反応したのは、双子の新藤姉妹だった。 「…私達はやめとく。」 「えっ?」 冬馬は自分の提案が拒否されるとは、夢にも思っていなかったらしい。 「…貴女、何も分かってないのね。 言っておくけど、このゲームはチーム戦なんかじゃないわ。 ルールのどこにもそんな事書いてないじゃない。」 双子は意外に鋭い所を突く。 確かにその通りなんだ。 偶然2つのグループに分かれているだけで、生き残りが多い方が勝ちとか、そういうルールはない。 「私が言いたいのは、チームで戦った方がより有利だということよ。」 冬馬は双子を説得しようと試みるが、無駄に終わった。 ここには彼女の取り巻きはいないんだ。 「勘違いしないで。あたし達はね、麻耶と真由さえ生き残ればいいの。」 「そう。その他大勢は関係ないの。クスクス。」 独特な雰囲気を醸し出す双子だとは思っていたけれど、やはり強烈な子たちだ…。
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