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あたしは、あたし達はもう1度冬馬がスイッチを押してくれていなかったら、とっくに正気を失っていたかもしれない…
これは後から落ち着きを取り戻した冬馬に聞いた話だが、落ちるとき、椅子の骨が真っ直ぐに伸びる仕掛けになっており、身体が地面と鉄椅子とのサンドイッチ状態になるらしい…。
「1日目の生け贄は乾志保さんになってしまったけれど、ゲーム終了まで、あと5日ある…つまり生け贄はあと5人必要ってこと。
分かるわね?」
あたし達は頷く。
「私は自分のチームの仲間をこれ以上、失いたくない。
皆もそうでしょ?…生け贄は、あちらのチームから出してもらおうと思うの。」
…?冬馬、それおかしくないか?
自分たちさえ生き残ればいいと言うの?
それで、本当に勝ったと言えるの?
「愛理の言いたい事は分かる。」
冬馬はギリッと奥歯を噛み締めた。
「私達の本当の敵は、三神たちじゃない。…私達を誘拐し、こんな狂ったゲームに参加させた奴ら。おそらくは…」
冬馬は、ハッと我にかえる。
「と、とにかく私達は生き残らないと…死んでしまったら、元も子もないわ。…そこで相談なんだけど。」
彼女は生徒会長の顔になる。
「戦略を練りやすくするために、皆のカードの能力を教えて欲しいの。もちろん、私のも教える。…どうかしら?」
冬馬は一同の顔をぐるりと見渡した。
最初に反応したのは、双子の新藤姉妹だった。
「…私達はやめとく。」
「えっ?」
冬馬は自分の提案が拒否されるとは、夢にも思っていなかったらしい。
「…貴女、何も分かってないのね。
言っておくけど、このゲームはチーム戦なんかじゃないわ。
ルールのどこにもそんな事書いてないじゃない。」
双子は意外に鋭い所を突く。
確かにその通りなんだ。
偶然2つのグループに分かれているだけで、生き残りが多い方が勝ちとか、そういうルールはない。
「私が言いたいのは、チームで戦った方がより有利だということよ。」
冬馬は双子を説得しようと試みるが、無駄に終わった。
ここには彼女の取り巻きはいないんだ。
「勘違いしないで。あたし達はね、麻耶と真由さえ生き残ればいいの。」
「そう。その他大勢は関係ないの。クスクス。」
独特な雰囲気を醸し出す双子だとは思っていたけれど、やはり強烈な子たちだ…。
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