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「私は皆が見せるならカード見せても良かったけど…双子がこれじゃあパスだね。」
根岸凛も本音は乗り気じゃなかったようだ。双子のせいにして、どこかホッとしてる。
「そう。残念だわ。」
冬馬は白けたような顔であたしを見た。
「愛理はどう?」
「あたしは…」
この状況下で気丈に振る舞っている冬馬瑞季は、実際凄いとは思う。
彼女だって、学園を出れば、ごく普通の18歳の女の子なんだ。
生徒会長という肩書きのせいで、皆を何とか救わなければ、という責任感を無意識に背負わされているのだ。
そう。
逃げる事は出来ない。
逃げ道がないから。
投げ出す事も出来ない。
彼女は"負ける"事は出来ないから。
「…最初、このカードの意味が分からなかった。
でも、もしかしたらこのカードは、使い方によっては、あたし達に与えられた唯一の武器かもしれない、と思うの。
これは勘だけどね。
だから、このカードの内容は誰にも教えちゃいけないし、敵に使われてもいけない。」
「分かったわ。愛理の言うことも一理あるわ。」
冬馬は溜め息をつく。
「お願いするわ。…出来れば皆さんがチームのために自分のカードを使ってくれるのをね。」
「分かってる。あたしはみんなの生存のためにカードを使う。」
あたしは冬馬に誓った。
彼女は力なく微笑んだ。
「…カードの話はこれでおしまい。
時間は有限よ。今日また一人、生け贄を選ばなければならない…。
私達は1日の前半こうして会えるけど、もし私達が生け贄を出さなければ、後は地の刻のチームに委ねなければならない。」
「奴ら、このゲームを甘く見てる。」
凛は頭を横に振った。
「私は連中に志保の一部始終を話した。でも分かってない。」
当然だ。
実際に人が死ぬ所を目の当たりにしなければ、彼女たちは理解出来ないだろう。
…あたし達は部屋に閉じこもって鍵をかけて、後はお任せします、というわけにいかないんだ。
もし彼女たちが生け贄を出さなかった場合…
「全滅。」
新藤姉妹の片割れが言った。
「犬死に。スーパーバッドエンディング。」
もう一人が顔をクシャッと歪ませる。
「それは…避けたいな。」
冬馬は天井の大時計を見上げた。
「やはり、彼女達と1度合流する必要があるわね。」
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