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悪夢としか呼びようのない1日目の終わりに、三神が言った言葉。
「とりあえず、睡眠だけはしっかりとる事よ。」
この状況下でしっかり眠れる太い神経が欲しい。
あたしは浅い眠りに落ちてはまた起きるという行動を何度も繰り返し、目覚める度に、これは夢でなかったと絶望するのだった。
根岸凛という子が言ってた。
これはただの余興じゃない。実際に人が1人、死んでいると。
それを確かめるために、三神静は"神の座"と呼ばれる椅子を呼び出した。
椅子にはおびただしい量の血と、肉片がこびりつき、異臭を放っていた。
まるで、獰猛な獣にでも食い荒らされたかのような惨状に、あたし達は言葉を失った。
悪戯にしてはいきすぎている。
でも本物と呼ぶにはあまりに残酷だ。
「これ、豚かな?酷いな…」
鳥澤楓は認めたくない。
「ここから脱出するのは無理ね…」
三神静は椅子の底に広がる闇を見つめて言った。
「足場がない。落ちたら怪我では済まないわね。」
冷静さを取り繕ってはいるが、見るに堪えないのか、すぐに椅子を床に納めた。
ドアにロックをかけて、部屋に1人閉じこもっているうちは安全だ。
ゲームが終わるまで、ずっと、ここにいようか?…ダメだ。完全防音のこの部屋には外の情報が一切入ってはこないのだ。
さて、そろそろ時間だ。
注意深くドアを開ける。中央ホールにはすでに猪ノ瀬と三神がいて、ほぼあたしと同時くらいに、影堂カナも現れる。
「宇崎さん、眠れた?」
猪ノ瀬は気さくに声をかけてくれた。
「あはは。眠ろうと努力したけど、何度も目が覚めちゃって。」
「私もだよ。まあ疲れは少しとれたかな…影堂さんは?」
せっかく猪ノ瀬が話しかけてくれているのに、カナは無視して席につく。
相変わらずだなあ…。
「ダメよ。ちゃんと眠らないと、集中力が低下するわ。」
三神は、そう言ってから、やや遅れて現れた鳥澤楓を横目で見た。
「…誰かさんみたいに寝過ぎるのも問題だけどね。」
鳥澤はあくびをしながら金髪をポリポリかいている。
「ああ、よく寝たぁ!…それで?敵さんに何か動きはあったぁ?」
「さっき鉄椅子を見たら変化はなかったわ。
今回、天のチームは生け贄を出さなかったようね。」
そう。彼女たちは「逃げる」ことが出来る。その点、あたし達のチームは不利なのだ。
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