地の刻(1日目)

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「優等生ってさ、普段はすましてるくせに、自分がいざ疑われる立場になると異常に取り乱すわよね?…笑っちゃう。」 「なっ…別に取り乱してなど…!!」 「ハイハイ。そこまで!」 金髪がぱんぱん、と手を叩く。 「あたしは早くこの手紙が読みたいんだけどね。」 それはあたしも一緒だ。 あの封筒の中身は、このおかしな状況を説明するための、おそらく唯一の手掛かりと思って間違いないだろう。 「鳥澤さん、良かったら貴女が読んで下さる?」 委員長はバツが悪そうに髪を弄ると金髪…そうだ、思い出した。 彼女の名前、鳥澤楓(とりさわかえで)だ…を指名した。 「ああん?別にいいけど。」 鳥澤は肩をすくめると、何の変鉄もない白い封筒から、縦4つに折られた紙の束を拡げた。 今まであたしの隣で置物みたいに突っ立ってた影堂カナが急に動き出した。 皆、鳥澤の近くに集まる。 ただ一人、背が高くガッチリした体型の少女…やはり名前が出てこない…だけは、あまり興味なさそうに、少し離れた場所から、あたし達の様子を眺めているだけだった。 「じゃあ、読むわよ?…キャハハ。何このふざけた文章!」 鳥澤は笑いすぎて、なかなか前に進んでくれない。 「早く読んでくださいな。…猪ノ瀬さんにも聞こえるように。」 猪ノ瀬と呼ばれた少女は「おかまいなく!」と手を振る。 そうそう。 あの背の高い少女は、猪ノ瀬弥生(いのせやよい)さんだ。 確かバスケ部の部長だったと思う。 「ごめん、ちゃんと読むわ…。ええと。」 "まずはおめでとう、諸君。神の供物に選ばれし、12のケダモノ達。" 「…クモツって?」 一瞬、しん、となった周囲に遠慮して、あたしは小声で委員長に尋ねた。 「神様に捧げる、お供え物のことですよ。」 さすが優等生。嫌がらずに教えてくれる。 "諸君たちには、本日より七日の間、ある試練を与えようと思う。" 「悪い、一行とばした。」 鳥澤は息を吸ってから、仰々しく言った。 "神は余興をお望みである" 「…ヨキョウって?」 あたしはまた尋く。 「ゲーム、のことかしら…」 委員長は不可解そうに首を横に傾げた。 「意味が分からないわ。どういう事?」 鳥澤は更に続ける。
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