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「別れてほしい」
突然 発せられた彼の言葉に
一瞬、思考が停止する。
いつか言われるであろうと
少し前から覚悟はしていた。
でも、こんな早くに
言われるとは思ってなかった。
理由はおおよそ検討がつく。
私の中で思い当たる
原因はひとつしかない。
「宮下さん、だっけ?」
「えっ…」
なんでわかった と目で訴える彼。
あなたは昔から隠し事が苦手。
ねぇ、知ってるのよ、私。
一週間前、街で偶然見かけた。
彼が女の子と歩いているところを。
彼の隣を歩く あの女の子 ―――。
調べなくても彼女の名前は
すぐに知ることができた。
彼が仕事の話をするとき
彼女の名前をよく出していたから。
隠し事ができない素直な彼に
私は惹かれたんだ。
でも、時にそれが私を苦しめる。
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