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まだ黄瀬先輩や岡崎先輩がいた年、私が高一の年の学園祭。
初の公演でがっちがちに緊張していたのを覚えている。
が、そんな緊張を一発でほぐしてくれた出来事があった。
その当時、演劇部の部員はたったの3人。
裏方にまで手が回らず、照明だけで済む脚本を選び、その照明役を山中先生にお願いしていた。
1人芝居と3人芝居とを交互に演じるという、シンプルな舞台だった。
確か、2本目の3人芝居の時。
何とかオチまでもっていくことができ、劇が終わった。
しかし…
「…?」
照明が、消えない。
5秒、10秒…
黄「照明、消してください。」
堪えきれなくなった黄瀬先輩が申し訳なさそうにそう言うと、
山「ぬっ、抜けない…っ!」
苦しそうな山中先生の声。
瞬間、客席からどっと笑いが出た。
私たちが舞台として使っている教室は「合同講義室」という、2つの教室をくっつけた場所だ。広さ以外はごく普通の教室だから、照明用のプラグはない。…本来は。
しかーし。うちの学校の合同講義室にはそれがある。
どこにあるかというと。
天井なのだ。
そのままじゃ絶対に届かない位置にあるそのプラグで照明の電源を取るために、毎回机の上に教卓を載せて高さを確保しているのだが…
山中先生はあまり身長が高くない。というか、私とそんなに変わらない。
だから。
体勢によっては、手がプラグまで届かないこともある。
精一杯背伸びをし、プルプルしながら手を伸ばしている先生の姿が照明の光ごしでも見えてしまった。
もう、笑うしかなかった。
ちなみに、客席で真っ先に笑ったのは、私の母だった。
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