遊びに行きます。

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母さんの目からぽたりと涙が溢れる。 「あっくんには、辛い思いをさせてしまったと、あの時にいっぱい後悔したの。…あの時すぐに見つけてあげられなくてごめんね。あっくんが無事に帰ってきてくれて本当に良かった。」 「母さん…。俺は大丈夫。泣かないで。」 俺はTシャツの裾で無理くり母さんの涙を拭った。 「ひっく…お化粧取れちゃうぅ~。」 Tシャツで拭ったのが面白かったのか、少し笑った後、母さんは泣き止んでくれた。 「ふふ、ありがとね、あっくん。」 そう言って、俺を抱き締めた。 少し恥ずかしかったが、俺もぎゅっと抱き返した。 「大きくなったね。…もう、高校2年生だもんね。」 「うん…。でも、身長はもう少し伸ばしたい。」 「…伸びるかしら?」 「伸ばすの!!」 「……ところで、君達はリビングで何してるんだい?」 母さんと2人して声のする方へと向くと、会社から帰ってきた父さんが立っていた。 「竹彦さん!お帰りなさい!」 「父さん、お帰りなさい。」 先ほどまで俺を抱きしめていた手をパッと離し、満面の笑みで母さんは父さんに抱き付いた。 父さんも慣れたものでただいまと言いながら母さんのおでこに軽くキスをした。 何だよ、朝はケンカしてたと思ったのに、もうちゃんと仲直りしてんじゃん。 ってか、ラブラブ過ぎて直視できない。 いちゃいちゃが終わると母さんはすぐにご飯をテーブルに並べ始めた。 「さぁ、麻斗。一緒にご飯にしよう。もう寮に帰ってしまうんだろ?色々お話しような。」 そう言って父さんはニッと笑うと、俺の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。 「うん。まだ話したい事、たくさんあるよ。」 久しぶりの家族の時間。 温かくて、くすぐったい。 またいちゃいちゃし始める両親に苦笑いをしつつも、俺の好物ばかりが並ぶテーブルに向けて、頂きますと手を合わせる。 こんな温かい空間が、俺も将来作れたらいいな。 そう思いながら、好物の並ぶ皿へと箸をのばした。
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