Ⅰ COLTELLO -ナイフ-

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そ……そんなもんなの? てかリードって?? ただ唇と唇を重ねるだけじゃないの? 「おい、琉架! こっち向けっ」 「ん?」 可愛らしく首を傾げた琉架のほっぺを両手で挟むと、 私は琉架にキスをした。 「!?」 ファーストキスが、なんだ!! そんなもの、大切にする方がおかしいんだ!! だって、馨ちゃんは8年前に簡単に奪われてしまったじゃん! 鼻が少し重なったのでやや斜めを向いて、慣れた感じをアピールしてみた。 驚いて目を見開く琉架、 甘い炭酸の抜けたコーラの味、 生ぬるい感触。 それが、私のファーストキスの感想だった。 「っぷっは!」 ロマンチックも糞も無いキスだが、私は満足して流架を解放した。 「……かえでさん」 解放された琉架の目がスゥッと冷たく座ると、 手が私の肩に伸ばされた。 「ファーストキスなんだから、もっと大切に、こうさ」 そう言って、私の唇を指でなぞった瞬間、 ヒュッと伸びてきた拳に、 琉架は後ろへと飛んで行った。 「いてっ」 長く綺麗な指に、ゴツゴツしたクロムハーツの指輪が光る。 その指を、私はよく知っていた。
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