題未定。

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 数年ぶりに帰って来た故郷は、晴れ着で歩く人達が目立っていた。  懐かしい風景が視界の隅を流れる。  冬の空が早々に色を変えていく下を、俺は全力で走っていた。吸い込む空気は確かに冷たいのに、服の下では汗が滲んでいる。  活気の無い商店街を駆け抜け、交差点を渡り、駐車場を通り過ぎて、やっと目的のショッピングセンターに着いた。勢いをそのままに店内へと進み、辺りを見回しながらひた走る。  専門店街、食品売場、フードコート、と一階をあらかた見て回る。人の間を縫って走る姿はなかなかに悪目立ちしていたが、誰もが足を止めてこちらを振り返る様子が、今は好都合だ。  店内はそう広くない。一階に見切りをつけ、階段を一つ飛ばしで駆け上がる。
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