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それから、一日でも早く大人になれるようにと生きてきた俺の人生は駆け足だった。
その日のうちに母に仕事をくれとせがみ、様々な家事の手伝いを経て、そんなに働きたいのなら、と勧められてキッズモデルを始めた。その流れで子役として出演したドラマが運良くヒットし少々名前が売れたものの、第二次成長を迎えると仕事は激減し、俺はすっかり過去のコドモになっていた。
それでも学校に通いながら端役や広告モデル等で細々と仕事を続けつつ、空いた時間に受けていたオーディションが功を奏してやっと手に入れた大きな仕事が一昨年の連続ドラマの準主役。何人も居るうちの一人ではあったが、それから仕事はだんだんと増え、世間にも多少認知してもらえるようになり、大学にも入学して、そしてこの雑誌の映画だ。
「迎えに来るって言ったよね。」
「え・・・・・・、じゃあシロちゃん・・・・・・。」
ふみちゃんの両手を取る。手は震えてしまって、しかも少し汗ばんでいて、情けないけれど、お陰で彼女の体の緊張が解けたのを感じた。
思い出してくれたんだと、それが嬉しくてとうとう、我慢していたのに、涙は勝手に溢れ出ていた。
「あ。」
「うわ、シロちゃん、なに。落ち着いてっ!」
あなたが落ち着いて、と云いたくなるけれど、口から出たのは嗚咽だけで。
唐突に抱き締めた時より戸惑っているふみちゃんに、「すごく目立ってる。」と言われて、いつからか集まっていた十数人の観衆にその時初めて気付き、人気の無いベンチまで移動した。
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