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(なんだよ、あいつ…)
呆れた目でボスの後ろ姿を見送ってから佐竹を見ると、彼はいまだに無言のまま俯いている。
『どうしたんだよ。らしくないじゃん』
『……オレ…』
『ん?』
『オンナみたいな顔してるのかな?』
そう言って佐竹は顔を上げた。
その表情はとても不安で弱々しくて。
そこでライムはハッとした。
理科の授業の時に感じた佐竹の違和感。
(あの時…ミツは笑ってたけどホントはユミちゃんに言われたことを気にしてたんだ)
『オレ、強くてオトコらしいオトコになりたいのに…。オンナみたいな顔じゃなれないよ…』
佐竹の瞳が不安そうに揺れている。
こんなに沈んだ姿を初めてみた。
確かに佐竹は目が大きくてハッキリした顔立ちをしている。
でも…
『オレは今までミツをオンナみたいって思ったこと一度もないよ。お前は誰にでも親切で、礼儀正しくて、喧嘩が強くて…オトコが憧れるオトコだよ。だから顔なんて関係ない!』
必死に伝えてくるライムに佐竹は少しだけ笑みを浮かべた。
『そう言ってくれて嬉しいよ』
『顔なんて大人になれば変わってくだろ!だから気にすんなよ』
『…うん。ありがとう』
そう言って笑みを見せた佐竹だけど、やっぱり元気がない。
(なんであの時、もっと早く佐竹の気持ちに気づいてあげられなかったんだろう…)
自分が悲しんでいる時、佐竹はいつもすぐに駆けつけてくれて、優しい言葉をくれていたのに。
悔しくてギュッと唇を噛み締めた。
(ミツがオレを助けてくれてたように、今度はオレがミツを助けたい…)
だから…
(いつもみたいに笑ってくれよ…)
…けれど、ライム思いはあっけなく覆されることになる。
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