ふたつ ~名前~

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押さえつけるられると普通は抵抗するものだが、 そんなこともなく動かなくなった。 「ちっ。最初からそうしてりゃいいんだよ。 誰か縄持ってこい。」 土方は手足を縛り身体の自由を奪った。 その傍らに死んだ狼を置いて… 「で、てめえの名は? どこのモンだ。 正直に言やぁ生きて此所から出られるかもな。」 だが、いっこう話そうとしない。 そこで山南はゆっくり近づき静かに聞く。 「キミの名前を教えてくれるかい?」 「……………?」 その者は訳がわからないというような顔をする。 「な……まえ?」 「そう。キミの名前。 何と呼んでいいかわからないだろ?」 山南がそう言った途端、 「バけもノ」 そう言った。 ・
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