Episode 1 はじまり

4/5
前へ
/5ページ
次へ
次の日もディックは夕方ジャンクの山にいた。 相変わらず空はどんよりと曇っていて、いつ雪が降り出してもおかしくないくらいだった。 「う~ん…あんまり多く持って帰ってもまた邪魔になるだけだしなぁ」 ディックはジャンクの上に座って考えていた。 「今日はこのくらいで帰るか」 ディックは立ち上がると、カゴを背負おうとした。 その時、向かいのジャンクの山に人影かあるのに気づいた。 「こんなところに誰だろう。ここは、本来立ち入り禁止なはずだけど…」 ここは、機械が支配しているフェンスの内側。いくらジャンクの山で、見つかりにくいからと言って、機械の巡回が来ないわけではない。 夜になると侵入者がいないか偵察機が回ってくる。 もう夕方だ。そろそろフェンスを超えておかないと危険だ。 しかし、その人影は動こうとはしなかった。 ディックは少し気になって近くまで行って見ることにした。 近づくほど人影は鮮明になっていった。 その人影はディックと同年齢くらいの少女だった。 「何やってるの?ここは立ち入り禁止だよ?もうすぐ夜になるしそろそろ戻らないと見つかるよ?」 少女は少し驚いた様子で振り向いた。 「え!?誰?」 そのとき、ものすごい警報音があたりに響いた。 「まずい!見つかった!とりあえず、柵の外に出なきゃ!」 ディックは、少女の手を掴むと入ってきた場所に向かって走り出した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加