第壱話 機神、覚醒(めざ)める

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2025年。 「ありがとうございましたー!」 自分の新居に荷物を運び終えた引っ越し業者のトラックに青年が手を振りながら礼を言う。 鉄筋4回建て、1部屋5.5畳、トイレと食堂は共同。 歴史ある大学の寮。 青年は仙台にある大学に進学し、引っ越して来たのだ。 青葉瞬一。18歳。 すらっとした体躯にサラサラの髪。女性と間違えられそうな顔付きと特徴的なエメラルドグリーンの瞳。 「さて・・・と」 自分の部屋に置かれたダンボールに入った衣服や日用品もろくに出さずに玄関に置いていた梱包されたものをガサガサと開封する。 新品のルイガノのシティバイク。瞬一が大学進学記念に購入したものである。 「せっかくだからコレで仙台を観光しますか!」 空は快晴。 瞬一はシティバイクに跨がり、ペダルを漕ぎだして走り出した。自らが今日から住む街を目に焼き付けるために。 瞬一を乗せたシティバイクが八木山の坂道を風を切りながら駆け抜けて行った。 同刻、仙台湾沖 一隻の漁船の上で一人の漁師が煙草をふかしながら刺し網漁を行っていた。 ゴポッ・・・ 「ん?」 海の底から水泡が不気味な音を出しながら上がってくる。それに漁師も気付き、不審に思いながら水面を覗いた。 すると・・・ 真っ赤に光る目がこちらを見ている事に漁師は気付いた。 「ひっ!!」 見たこともない恐ろしい眼差し、感じた事もない殺気に思わず漁師は腰を抜かす。 異形のシルエットが漁船の真下を潜り抜けていった。
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