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駐車場にはシルバーの高級そうなセダンのボンネットに身体の重心を預け、片手はスーツのズボンのポケットに突っ込みながら携帯をいじっている部長がいた。
(…すごく様になってるなぁ、
格好いい…。)
佐伯部長はがっしりした体育会系の体格に、浅野○信似の顔立ちで社内でも憧れている人も少なくなかった。
『…何突っ立ってるんだ?来たなら声を掛けろよ!』
まさか見惚れてました、とは言えず、すいませんっと小走りで駆け寄った。
部長が車のキーレスを解除すると、私は後部座席に乗り込もうとドアに手をかけた。
『俺はおまえの運転手か?横に乗れよ!』
『いやー、さすがに奥さまに申し訳ないので~。』
佐伯部長は愛妻家で有名だった。いくら部下でも助手席に乗るのには気が引け、やんわり断りをいれると、
『あほかっ!そんなこと、おまえが考えることじゃねーよ、早く横に乗れ!上司命令だ。』
『上司命令っ!?…ずるいっ。』
これ以上逆らうのは身の為ではないことを悟り、助手席に乗せてもらうことにした。
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