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俺は金子颯太郎 27歳。
様々な事業を手掛けている金子グループの長男。
ゆくゆくは親父の跡を継ぐつもりでいる。今は、修行も兼ねて本社の企画課で課長に就いている。
周囲には親父の七光りだ!とかくだらないことを言う奴らもいるが、俺自身がそういうのが一番嫌いだ。だから、努力は人並み以上にしてきた。
そんな俺が一番嫌いなものは、「女」だ。自分で言うのもなんだが、容姿も悪くない、金子という名前も合わさって昔から女に不自由したことはなかった。だが、昔の俺は何も解ってなかった。俺自身を見てくれる奴なんて一人もいなかった…
だから俺は求めることを止めた。
いつしか、上部だけでしか人と付き合えなくなったー
…そうすれば、俺は傷付かなくてすむんだ。
『颯太~郎~!』
何とも軽い口調の声にため息を付きながら振り返った。
『いま、打ち合わせから戻ったのか?』
『あぁ。』
廊下を歩いている俺の横に並び一緒に歩き出すこいつは
加藤大樹 28歳。一つ年上ではあるが一応同期。営業課の課長をしている。
軽くウェーブがかかっている髪に所謂イケメン、社交性もあるから女たちからもよく声がかかる。
『きゃー、金子さんに加藤さんだわっ。』
『お疲れさま。』
煩い女たちに手を振り愛想を振りまく大樹に舌打ちしながら歩く速度をあげる。
『あっ、颯太郎待ってよ。』
『おまえと歩くと目立つから嫌なんだよ。』
『まぁ、まぁ。世の中には男と女しかいないんだから仲良くしなくっちゃ!』
『俺にはそんなの必要ない。…おまえ、そういえば何で俺に付いてくるんだ?何かよう?』
企画課と営業課は階が違う。仕事の用件でもあったのかと思い、大樹に尋ねる。
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