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彼女はまだ、僕の正体を知らない。
包み込まれるような日差しの中、ユカは嬉しそうにベンチで待っていた。
「アイス買って来たよ」
「やったあ、早く早くー!」
僕はユカの右手を取り、紙が巻かれたコーンをにぎらせる。
「何味か分かるかな?」
彼女は口の周りに白っぽいヒゲを作りながら、何度も口に運んでは首をかしげる。
「イチゴ? あっ、モモだ!」
「ブーッ。ヒントは、オレンジ色」
「やっぱりモモじゃん」
「正解はマンゴーでした」
文句を言いながらも、ユカの笑顔は噴水の水しぶきのようにキラキラとしていた。
彼女はまだ知らない。
本当の僕を知らない。
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