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スポーツジムの受付で、会員証を出すと、パソコンを操作しながらトレーナーさんは
「お久しぶりですね。
無理をしないようにゆっくり進めて下さいね。」
にこやかに鍵を渡してくれた。
ジャージに着替え、ストレッチをしながら、通り過ぎるトレーナーさんに挨拶をしていると、騒がしい奴がやってきた
「あれぇ?珍しい人がいるぞお、
何だ、体が重くなったのに気が付いたのか??」
ムキっとした筋肉を見せつけるかのようなぴったりしたTシャツに、ファイルを脇に挟んで歩いてくる。
首からはスタッフネーム。
「前田さんが、うるさいから来たくなくなるんでしょうが」
イヤミには、イヤミで返すしかない。
悪い人じゃないけど、お喋りが過ぎるのがタマニキズ。
筋肉には容赦ないから、トレーナーとして付かれちゃうと痛い目を見るのだ、
前に楽しく話をしながら、マシーンをこなしていたら
「もう一段負荷を付けるといい感じ~」
「足じゃなくて、ここ、腹痛で押して」
「上がる前にゆっくり30分走ってからがいいよ、夜ご飯のメニューを考えながらがオススメ」
等と、最後には私の口数は全く無くなっていた。
フラフラと疲れきった私に
「風呂は湯船に入ってくださいね」
満面の笑みでジムから送り出した。
次の日、筋肉痛にならなかったのがせめてもの救いだった。
「久しぶりなんだから、前田さんじゃ、嫌だからね。」
先手必勝とばかりに、牽制すると
「尚更俺がいいのに。」
爽やかスポーツマン的に歯を見せて笑いながら脇に挟んだファイルを手に取り、
「じゃあ、半から、コンバット始まるから、それまでランニングして、やったらいいと思うよ?」
スタジオを指差しながら、言ってきた。
時計を見ると、13分を指していて、スタジオでは女のトレーナーさんが準備をしていた。
どうせ決めていなかったから、それでいいやと、
「そうするか。」
独り言のようにランニングマシーンに向かうと、当然のように前田さんも付いて来た。
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