さよなら

2/6
前へ
/208ページ
次へ
朝目が覚めれば、朝飯の前にトイレに行く。 その時、もうこの一秒は二度と来ないと思うと、少し寂しくなるね。 朝飯はフレンチトースト。 頑張って作ってみた。 美味しいのに、この感覚は二度と味わえない。 溜息が出ちゃいそう。 次に学校の準備をして言うんだ。 「行ってきます」……なんて嘘。 本当はもっと訛っていて、「ってきゃ~す」になっている。 毎日同じなのに、この声もいつかは聞けなくなる。 成長すれば聞こえない、その訛った声も。 なんだか愛おしく感じる。 ナルシストとか言うなよ(笑) 学校に行くため、バスに乗る。 ケータイでバスの情報をキャッチ。 今日は七分遅れで来るそうだ。 もう少し早めに出れば良かった、などとケータイの画面を眺めていた。 今日だけ思える気持ちかもしれない。 明日からは十五分早めに出よう。 バスに乗り込めば、空いてる席を探す。 適当に座って、次の駅。 杖をついた老人が乗って来た。 誰も席をゆずらず、鞄が重いけれど罪悪感の方が重かったから、とりあえずゆずった。 もう二度と会わないかも知れないのに、老人は笑顔でお礼を言ってきた。 ちょっとだけ嬉しかったのは内緒。 バスの中で十五分を過ごせば、やっと降りるバス停に到着。 肩が辛かったけど、悪い気はしなかった。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加