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僕はサザエさんが嫌いだ。
サザエさんというキャラクターが嫌いな訳ではない。毒のないマスオさんや、思春期の悩みのなさそうなカツオやワカメ、いつまでも幼いタラちゃん、存在感の希薄なフネ、昭和の始めのステレオタイプな親父像波平、これらのキャラクター達が繰り広げる何でもない日常生活の退屈なドラマ。すべてが予定調和で収まっていく。もっと個人としての生の叫びはないのだろうか?もっとワガママに、時には人に迷惑をかけながら、人とぶつかり合うようなドラマは?サザエさんには圧倒的にリアリティが足りない。しかし、それはいい。
本当のことを言うと、僕がサザエさんを嫌いな最も大きな理由はそんなことではない。それはサザエさんが日曜日の夕方6時半に始まることだ。
日常生活に溶け込んだあのサザエさんのテーマソングは輝かしい休日の終わりを告げている。明日から学校だ。そんなことをパブロフの犬的に悟らせてくれる。暗い気持ちでサザエさんとその愉快な仲間達が繰り広げる生気のないドラマをただ茫洋と眺める。
大人になってもそれは変わらない。明日の会議が憂鬱だ。成績の発表がある。サザエさんの明るい「また来週!」の言葉が虚ろに胸に響く。
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