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そのまま、私は今度こそ、いつものように学生寮を後にした。
2
まだ誰もいない教室に鞄を置いて来てから、私は一度、魔導学院の本棟へと向かった。
“あの人”が籍を置くという『魔術士(ウィザード)』の教科棟には、本棟のエントランスホールを経由しなければ行く事が出来ないのだ。
やはりまだ早朝のためか、人影の疎(まば)らなエントランスホールを、『魔術士』の教科棟を目指して私は一直線に横切っていく。
“あの人”の所属するクラスは、事前に教務課の先生から教えてもらっているため、迷う事はない。
複雑に分岐する通路の中から、私はAランクの教室に続く一本を選び、あとは校内地図にしたがって歩みを進めていくと……。
やがて、私は一つの教室の前までたどり着いた。
(ここが……)
少しの間、私はスライド式の扉の上部に設けられたプレートを眺めてから、大きく深呼吸をした。
心なしか、普段よりも強く鼓動を刻む心臓を押さえるように胸に手を当てつつ、そっと、ブレザーの内ポケットからハンカチを取り出す。
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