プロローグ

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暖かな夕陽が頭を垂らした稲穂を照らし、黄金色に輝く田園が広がる山村に一人の美しい女性が歩いている。 百合と朝顔の模様をあしらった白い浴衣を涼しげに着て黒く艶やかな髪は綺麗に一つに纏めている。 切れ長の黒い瞳からすっと鼻筋が通り、薄く赤い唇は口角をやや上げ絶えず微笑んでるようだった。 わらわ達に話があると言っておったが、大層狼狽えておったの…… 大人の女性にも可憐な少女の様にも見えるその女性は、田園風景に一際目立つ武家屋敷のような館に向かって歩いて行った。 「これは、日巫女(ひみこ)様お出で下さりありがとうございます」 「気にするでない、そなた達が困っておるのだろう」 「ありがとうございます。所で日巫女様、本日も涼しげな浴衣がお似合いで大変美しいですな」 「そうか、わらわもこの百合と朝顔の柄を気に入っておる、して他の者は?」 「はい、奥に揃っております」 そう告げると白髪が混じった初老の男は日巫女を奥に案内した。
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