プロローグ

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羞恥、後悔、虚無、無力、憤怒の何れも内包した感情に身を焦がし男達は皆、声を圧し殺して泣いていた。 「そなた達の気持ちはよく分かった……しかし、このまま何もせぬという訳にはいくまい」 「日巫女様、私達は……里を……降りようと思っています」 秋山は涙で声が途切れ途切れになりながら日巫女に伝えた。 「そうか……寂しくなるの……」 「「日巫女様、申し訳ございません」」 アメリカ軍の追跡から逃れる為に秋山達は一族で里を降りる事を決断していた。 里を降りて人々に紛れ込み普通に暮らしてさえいれば鬼だという事は、まずばれることはない。 普通の人々に鬼と人を見分ける術はない。鬼一族しか持っていない眼、"鬼眼"(きがん)を使えないからだ。 そして里から降りて一族がばらばらに暮らすという事は一族の悲願である、一族の興隆も瓦解する事になる。 しかし、この大戦を通じて一族は知ってしまった。一族の稀有な能力などより科学技術のほうが遥かに優れている事を。 この事が里を降り人々に混じり普通に暮らす事を決断した最大の要因となった。 この先、人々に混じり普通に暮らしていくのだが、人々の前で鬼の能力を使う事は最大のタブーとなっていった。
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