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「もしもし」
眠そうな美貴の声が聞こえた。
「もしもし、変な時間にごめん。起しちゃった?」
「いや、大丈夫。喉が渇いて起きたところだったから。どうしたの?」
どうしたのと言われて、なんて答えようか考えてしまった。時間も時間だし、特に理由はない。
「・・・こんな時間に声が聞きたくて電話したって言ったら怒る?」
「怒りはしないけど、逆に心配になるわよ。何かあった?」
「・・・特にはないよ。うん、何もないよ」
「・・わかった、それじゃ、おやすみ」
通話終了の音がした。実はというと、今の電話で俺はプロポーズをしようとした。歓迎会の時に、真神さんと恋人の話をして、触発されたというか、お酒の勢いを借りて返事をしようと思った。でも、本当の事を言う前に、電話が終わってしまった。言おうとしても、途中で躊躇ってしまい、結局、何も言わないままいつもみたいに終わってしまう。いつもそんな風に電話での会話の時間が終わってしまった。心の中で、美貴に伝えられなかった気持ちが、心の中で右往左往していた。
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