苦悩

16/16

73人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
 そして、急に真神さんは走り出した。道路に向かって・・・。   その後の事は一瞬だった。真神さんの体は直進してきた車に飛ばされ、俺が駆け寄った時には息をしていなかった。救急車が駆け付けるまで、運転手と協力して人工呼吸をしていたが、救急車が到着して措置をしても息をすることはなく、病院へ搬送されるまで、救急車の中でも救急隊員の人達による処置が続けられてた。一緒に救急車に乗った俺はその一部始終を見ている事しか出来なかった。  病院に着いてからも、懸命な措置は続いたが、意識は戻らなかった。真神さんの家族も俺と一緒にいた。  手術を施した先生から、手術室の前に呼ばれた俺と真神さんの家族。そこには、男性が手術の時に着る緑色の服を着て立っていた。  「緊急手術は成功しましたが、脳へのダメージが酷く、植物人間になる可能性があります。覚悟していて下さい」  泣き崩れる家族。俺はそれを黙ってみているしかなかった。先生は説明を淡々を続けていたが、俺はそれを無責任だとは思ったが、その場から立ち去っていた。自分の気持ちを伝えたことで起きた悲劇。俺のせいではないと思う。でも、真神さんの家族はどう思うのだろう。俺のせいと思っているのだろうか。俺があんなことを言ったから、真神さんは取り乱した。そして道路へ・・・意識が戻らないかもしれない。俺のせいで。何をしたら罪滅ぼしになるだろう・・・色々考えながら、ある決断を俺はした。そして、病院を出て、携帯を取り出して美貴に電話をかけた・・・別れを告げるために・・・
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加