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美貴に電話をかけてる時も、真神さんへの罪滅ぼしの事を考えていた。この事態は俺の責任だし、俺も何かしなきゃって思ったから。
美貴が電話に出た。
「もしもし」
この声はやっぱ安心する。この声を聞いた後で、自分の決心が揺らぎそうになる。でも
言わなければならない。俺の罪ほろぼしのために、美貴に別れを告げるという罪を犯して。
「もしもし。今電話大丈夫か?大事な事を伝えたいから長くなるんだ」
大事な事と言えば、美貴はプロポーズの事だと思うだろう。
「大事な事?」
言うんだ、言うんだと自分に言い聞かせた。
「実は、俺のせいで、一生が無になってしまった人がいる。俺は、その人に罪ほろぼしをしていこうと思ってる。だから、俺は、美貴と一緒にいられる時間はない・・・別れてほしい」
・・・お互いの短い無言の時間が、とても長く感じられる。俺は、ひたすら美貴の言葉を待っていた。
「・・・勝手すぎない?私がすぐに別れようなんて言うと思う?何よ、罪ほろぼしって」
美貴のすすり泣く声が聞こえてきて、胸が苦しくなった。しかし、何を言われようが、俺は引く事ができない。
「勝手なのは十分に分かってる。でも、その人の人生を壊してしまったのは俺だから。そのままで俺は美貴と付き合っていくのはとても出来ない。自分だけが幸せになろうとしてるなんて。それに、そんな状態で美貴といたって、美貴との関係も悪くなっていくだけだと思うし。そんなことなら、俺は美貴と別れたい」
本当に勝手な事を言っている。そんな自分に嫌気がさしてきた。
「私の・・・私の時間を返してよ。貴方と一緒にいた時間を返してよ。今までなつきと一緒にいた私には、なつきしかいなかったのに」
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