そばにいる

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 真神志穂さんに自分の気持ちを伝えて、プロポーズをした。あとは、真神さんの体の回復を待つだけだった。意識は戻ったものの、ケガの具合は酷いものだった。正直、生きているだけでも奇跡だった。  仕事が休みの日には、ほとんど真神さんの病室にいた。数時間だけど、一緒にいて、職場での話や、俺の過去、二人でやりたい事、真神さんがみたいテレビを一緒にみた。  病院から帰宅後、俺はバイトに行った。これといったお金の使い道を考えていなかった。ただ家にいるのが辛くて、わざと美貴と喧嘩した事を後悔してしまう。それ嫌でバイトを始めた。それはもう、5か月前の事だった。街路樹の葉は枯れ落ちて、街を歩く人達の服装は、風の通しにくい素材を使った服装に変わっていた。前までは一緒に美貴と街を歩いていれば、それだけで温かかった。だけど、今は一人で、いくら歩いても温まらない感じが、周囲の人間から、自分が浮いてる感じがした。  気がつくと、見覚えのある店の前を歩いていた。そこは美貴と待ち合わせをした店の前だった。以前より殺風景な感じがした。この感じも、俺が今一人でいるせいだからだろう。  美貴と一緒に座ったベンチが見当たらなかったけど、その記憶がある俺にとっては、ベンチがなくても寂しいのには変わりはかった。  店の前を立ち去ろうとした時だった。その店から美貴が出てきた。美貴と目があった俺は足早に立ち去ろうとした。
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