そばにいる

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俺は見ていられなくなって、自分から体を近づけた。  そして、真神さんは、僕にキスをした。ゆっくりと唇を重ねた。その時の真神さんは泣いていた。  「さようなら」  唇を離すと、真神さんは僕の体を軽く押して、病室を出るように促した。  俺は病室を出た。病室をでて、階段を下り、病院の外に出て、アパートに向かって歩き出していた。その途中に、親友に電話をかけて待ち合わせをした。アパートまで、車で乗せて行ってほしかったのもあるが、今一人でいたら、自分まで真神さんみたいになってしまうんじゃないかと思ったからだった。  親友との待ち合わせの場所に着き、程なくして親友が来て、僕のアパートに向かった。  そして、部屋に親友と二人で夜まで待っていたら、理由を知った親友が、飲み屋に行って気晴らしをしようと言ってくれた。親友が奢ってくれると言ってくれた。アパートでCDや映画のDVDを観て夜まで時間を潰し、飲み屋に二人で歩いて行った。  飲み屋に着くと入口が人で混んでいた。予約客なのだろうか、カウンターで何やら店員と話をしている。そのお客さんの確認がとれのか、奥に案内されていった。  「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか」  俺達は返事をした。かしこまりました、こちらです、と言われ、個室に入った。  この店の個室は、部屋の明かりを少し暗めにしてあり、オルゴール調にアレンジされたJ―POPが流れている。今の僕の気分にはマッチしていた。  ビールと刺身を注文して、乾杯をした。こんな気分で飲むビールの味は、いつもより高級なビールを飲んでるはずなのに美味しくない。二口目にはビールを一気に飲み干して、次にワインを注文した。そんな僕を見た親友が心配そうに僕を見ていた。  お酒も進み、二人とも結構酔っぱらっていた。このくらい酔えば、僕も気分がよくなっていて、さっきあったことなんか気にならなくなっていた。  店員を呼び出しボタンで呼んで、おあいそと告げた。飲み食いした物の合計が終わり、カウンターに向かった。カウンターには美紀がいた。  真神さんとの事を思い出し、美紀に別れを言った時の事を思い出し、一気に酔いが醒めた。美紀の顔を見ると、美紀も驚いているようだった。
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