そばにいる

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 美紀の素直な気持ちに答えていいのだろうか。一人で考えていた。美紀の目をまっすぐ見て。  「おい、夏樹。ボーっとしてんじゃねぇ」  親友から声を掛けられて、そっちの方に体を向ける。  「こんなにストレートに自分の気持ちをお前に伝えてるのに、どうして応えてやらねぇんだ。男らしくここで決めねぇでどうする」  お酒の力なのか、普段なら言わないことを言う親友。でも、その一言で決めることができた。 「美紀、僕みたいな人間に、もう一度付き合いたいなんて言ってくれてありがとう。僕の気持ちは、美紀と結婚したい。ここでプロポーズをするのも変だけど。美紀、結婚してほしい」  僕は、結婚してほしいという言葉が、こんなにも簡単に出てきた自分に驚いた。驚きながらも美紀の返事を待っていた。  突然夏樹からプロポーズされたということに、目を丸くしていた。隣にいた美緒李まで目を丸くしていた。  「ここでプロポーズなんてしないでよ。そういうことは、ムードを考えて言ってよ。隣には親友がいるんだから、恥ずかしいわよ」  夏樹も恥ずかしそうにしていた。  「でも、プロポーズしてくれて嬉しかったよ。待たされた甲斐があったわ。これからも、夏樹のそばにいさせて下さい」  周囲のお客さんも、カウンターにいた店員さんも私達を見ていた。そして、歓声と拍手、指笛で私達を祝福してくれた。私は、恥ずかしくなって、夏樹の胸に顔を埋めた。埋めながらも夏樹の顔を見てみると、私よりも恥ずかしそうだった。でも、そっと私を抱き寄せてくれた。  「ベタな事言うけど、美紀を頑張って幸せにするから」  私は、夏樹のその一言に、とびっきりの笑顔で返した。
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