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ガコンと大きな音と共に、落ちてきたジュースを取り出す。
入院患者が談笑する部屋へ向かって椅子に座る。
「笹島・・・と、そんな仲良かったっけ?」
見舞いに来るほど仲が良かったのか疑問に思い尋ねる。
「ああ、ちょっとね・・・」
なんて言われると気になるだろ。
やっぱり俺なんかより女子の方が・・・
って、何考えてんだよ俺。
「責任感じてるみたいで、毎日来てくれるんだ」
「せき・・にん?」
なんで笹島が?
「あん時俺、音楽聞きながらバイト行ってたんだけど・・・まぁボーっとしてたって事もあって笹島に呼び止められてることに全く気付かなくてさ。
で、ゴンって車にぶつかったから。
笹島、自分がちゃんと止めてたらこんな事なんなかったってスッゲー気にしてて」
「理雄がボーっとしてるなんてこともあるのか?」
「あ。あの日はそりゃ、ボーっともするだろ」
「あ・・・ごめん・・・俺・・・」
「それは何に対するごめん?」
まっすぐに俺を見る理雄。
「あの・・えっと」
「嘘だよ。別に昴のせいじゃないし。
でも、お見舞い来ないかと思ったよ」
「え、いや・・・それは」
「来にくいよな・・・ありがとな。来てくれて。
でも、無理して来なくていいから」
自分が腕を振り払ったくせに、理雄に拒絶された気がして胸が痛んだ。
「それにしてもあの山道、よく一人で行けたな」
「一人じゃなかった」
「ん?ああ、誰か一緒に行ってくれたんだ」
「違う・・・理雄が居てくれたから」
「俺?」
「くじけそうになると理雄の声が聞こえたんだ」
「幽体離脱?」
ふざける理雄を睨みつける。
「シャレになんないとこだったから、笑えないか。
そっか。俺、こんなんでも役に立てたんだ。
昴、お帰り」
「すっげー不安で」
理雄のお帰りに返事をせずに話し出す。
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