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あんな顔させるつもりはなかったんだ。
『気持ち悪いだろ。
悪かったな、嫌な思いさせて』
そんな言葉、言わせるつもりはなかったんだ。
「-----お!」
自分の叫び声で起きた。
腕は伸びた状態で何かを掴もうとしていた。
何の夢を見てたんだろうか。
さっぱり覚えてないけれど、夢見が悪かった事だけは確かなようで首の周りに嫌な汗をかいている。
チリン
窓際の風鈴が鳴る。
ああ、そうか風が気持ちよくて窓開けたまま寝たんだっけ。
暑さで目が覚めたんだろう。
窓の外に見える月が煌々と輝いている。
チリン
窓のサッシ部分に腰を掛けて外を見る。
真下に一緒に旅している自転車が目に入った。
「理雄・・・」
親友の名を呟く。
『俺、お前が好きだ』
冗談だと思った。
でも親友はいつもと変わらない真面目な顔をして俺をまっすぐ見て言った。
俺が好きな人ができたと言うと、『そっか』なんて冷めた返事をした理雄にしつこくお前も居るんだろ?教えろよと詰め寄った結果
『お前が好きだ』
と言われた。
男だよ、俺・・・そう答えると『知ってる』と眼鏡の奥の目が優しく笑った。
『言うつもりなかったんだけどな』
そう言って、俺の方に手を伸ばした瞬間俺はその手を払った。
理雄は今にも泣きそうな顔をして『気持ち悪いだろ』そう言ったんだ。
あんな悲しそうな顔させるつもはこれっぽっちもなかった。
ただ親友だと思ってたヤツから『好き』と言われてどう対処していいか分からなかったんだ。
『悪かったな。嫌な思いさせて』
そう言って俺に背を向けて帰っていった理雄。
どうしても後を追いかけることができなかった。
どうすりゃよかったんだ?
その日の夜、理雄は交通事故にあって未だに意識を取り戻さない。
このまま目を覚まさなかったら?
俺はどうしたらいい?
理雄
どうしたらいいんだ?
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