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『こんな時にどこ行くの?』
親にそう言われた。
『こんな時だからこそ行くんだよ』
その言葉は飲み込んで自転車と必要な物を持って、去年理雄と走った旅を一人ですることにした。
夏休み。
本当なら二人でまた一緒に旅するはずだった。
準備も全部終わって、明後日出発のはずだった。
それなのに・・・
頭の中ぐちゃぐちゃで、でもペダルを漕いで風を体全体で感じていくうちに何もかも忘れられるんじゃないかと思った。
『ああ、今回も試験ダメだった』
『毎回その言葉聞いてるけど、少しは努力とかしてる訳?』
学年トップ10に毎回入る理雄が呆れたように俺の答案を見る。
『努力と根性って言葉俺にはない』
『言い切るなよ。
大学、行くんじゃなかったのかよ』
『そのつもりだけど、なんかどうでもよくなってきた』
『投げやりだな。合コン三昧何だろ』
『ああ、合コンが遠のいていく』
アハハと理雄が笑う。
一緒に合コン三昧、頑張ろうぜ。そう言って一緒に勉強してたはずなのに。
『お前が好きだ』
その言葉が頭から離れない。
女の好みとかさんざん言ってたくせに、なんだってあんな事言うんだよ。
気が付くと、空が白んできた。
あと少しでこの旅も終わる。
毎日ヘトヘトになるまでペダルを漕いで、泥のように眠るけど頭から離れない。
忘れたいのに、忘れられない。
忘れるはずがないって分かってる。
俺にとって理雄は・・・・
出るはずのない答え。
上っていく太陽の眩しさに目を細める。
なぁ、理雄。
俺はどうしたらよかった?
意識を取り戻さない理雄の姿を目にしたとき、自分のせいだと強く感じた。
俺が、拒絶したからきっと理雄は・・・・
運転手は『突然飛び出してきた』そう言ったらしい。
理雄が目を覚まさない限り、真相は分からない。
子供じゃあるまいし、飛び出すなんて行為自殺を考えなえりゃしない行為だ。
俺のせいで理雄は・・・
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