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……怒声。それに恫喝するような声。
どうすっかな。……仕方がないか。
俺は耳に引っ掛けてある通信機に向かって話しかけた。
「 湊。こっからどう行けばいい? 」
「……総司か。道に迷ったわけじゃないだろう?」
通信機の向こうで眼鏡を賢しく押し上げる湊の姿が目に浮かんだ。
「そ、それが……敵に見つかった。……。おいこら溜め息つくな」
「これが溜め息をつかずにいられるかい?」
それを言われて俺は渋い顔になる。だから言いたくなかったんだ。
再び溜め息をつく湊。
「なんのために僕が作戦を考えたのか。そこを考えて欲しいね。まったく。そもそ」
「説教は後で頼む」
長くなりそうだったので腰を折って話を進めさせる。
「そうだね。総司だったらどこからでも行けると思うんだけど」
「どこが一番楽に行ける?」
「ちょっと待て」
キーボードをピアノようにリズム良く押す音が通信機越しに聞こえた。
湊は今、ビルの外で待機しているはずだ。
「わかったよ。そこの階段で8階に上がって一気に9階まで行けばいい」
「要するに、普通に階段を登れと?」
内心、聞かなければ良かったと思ったのは内緒だ。
「その通りだ。……分かっていると思うが気をつけろよ」
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