第一章 そのきっかけ

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 ……怒声。それに恫喝するような声。  どうすっかな。……仕方がないか。  俺は耳に引っ掛けてある通信機に向かって話しかけた。  「 湊。こっからどう行けばいい? 」  「……総司か。道に迷ったわけじゃないだろう?」  通信機の向こうで眼鏡を賢しく押し上げる湊の姿が目に浮かんだ。  「そ、それが……敵に見つかった。……。おいこら溜め息つくな」  「これが溜め息をつかずにいられるかい?」  それを言われて俺は渋い顔になる。だから言いたくなかったんだ。  再び溜め息をつく湊。  「なんのために僕が作戦を考えたのか。そこを考えて欲しいね。まったく。そもそ」  「説教は後で頼む」  長くなりそうだったので腰を折って話を進めさせる。  「そうだね。総司だったらどこからでも行けると思うんだけど」  「どこが一番楽に行ける?」  「ちょっと待て」  キーボードをピアノようにリズム良く押す音が通信機越しに聞こえた。  湊は今、ビルの外で待機しているはずだ。  「わかったよ。そこの階段で8階に上がって一気に9階まで行けばいい」  「要するに、普通に階段を登れと?」  内心、聞かなければ良かったと思ったのは内緒だ。  「その通りだ。……分かっていると思うが気をつけろよ」
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