0人が本棚に入れています
本棚に追加
凧場は凄く込み合っていて背の小さい私は空も見えなかった。
だが私はスーパーボールの店を見つけると猛ダッシュで走って行き、大声で父を呼んだ。
「パパーッ美紀、スーパーボールすくいしたいっ」
「・・・しょうがないな。翔君もやるか?」
翔は昔っから物静かな性格だった。
父の言葉にうなずき、私と翔は一緒にスーパーボールすくいをすることになった。
不器用な私は瞬殺ですくう紙を破き、スーパーボールを1つも取れなかったが、翔は器用で手際よくパッパとスーパーボールを入れ物に入れていく。
10個ぐらいすくって満足いったのか、手を止め私にその10個のスーパーボールを渡した。
「・・・?」
幼い私は理解できず、首を傾げるばかりだった。
「翔君美紀にくれるのか?
翔君は優しいな」
父は翔を褒め称えた。
私はそれで分かった。
翔は、私に優しくしてくれたのだと。
「・・・」
無言で渡した翔に向かって私は思いっきりの笑顔で
「ありがとっ」
と返した。
日差しの強い五月晴れの昼だった。
最初のコメントを投稿しよう!